制作ワークフローの設計 — Create → Experiment → Build → Present
つくる工程を4段階に分け、どこで戻れてどこで確定するかを決めると、作り直しが減り制作が前に進みます。
制作フォルダを開くたびに、前回どこまで進めたか分からなくなる。バリエーションのファイルが増え続け、どれが最新か判断できない。こうした状態は能力の問題ではなく、工程に「戻っていい場所」と「確定していい場所」の区別がないことが原因です。ここでは制作の流れを Create → Experiment → Build → Present の4段階に分け、それぞれで何を許し、何をロックするかを具体的に決めます。
制作は「発散していい段階」と「確定してよい段階」を分けると迷いが減ります。Createでは判断を保留し量を出す、Experimentでは条件をそろえて比較する、Buildでは決定事項を後戻りさせない、Presentでは発表形式を先に決めておく、という4段階に分けて考えます。ツールを乗り換えるタイミングでファイル形式や解像度が崩れやすい点も、あらかじめ受け渡しルールを決めることで防げます。
なぜ4段階に分けるのか — 迷いの正体
作り直しが多い制作の多くは、発散(アイデアを広げる)と収束(一つに決める)を同じ場所で同時にやろうとしています。ラフを描きながら完成度を気にする、下書き段階で配色まで悩む、といった状態です。段階を分けると、今この作業で判断していいことと、まだ判断しなくていいことが明確になります。
「戻れる地点」を決める
各段階の終わりに一つ、後で見返すためのチェックポイントを置きます。たとえばCreateの終わりは「案を3〜5個、フォルダにまとめた状態」、Experimentの終わりは「比較条件をそろえた候補が出そろった状態」です。ここを保存しておけば、後の段階でやり直しが必要になっても、最初からではなくその地点まで戻れます。
Create — 発散のための下ごしらえ
Createの目的は量を出すことで、完成度を評価することではありません。AIでアイデアを広げる記事で扱ったように、ラフな指示からでも複数方向の案を素早く出せます。この段階で完成度にこだわると、良い案を早い段階で捨ててしまうことになります。
ファイル名と保存先を先に決める
「案_連番_日付」のような命名規則と、案ごとのサブフォルダをCreateの最初に決めておきます。あとから整理しようとすると、どのファイルがどの案の派生かたどれなくなるためです。
Experiment — 試して比べる段階のルール
Experimentでは、Createで出した案の中から有望なものを絞り込みます。ここで重要なのは比較条件をそろえることです。サイズも書式も違う候補を並べても、良し悪しの判断は感覚頼りになります。
ツール間の受け渡しで壊れやすいもの
下描きツールからレイアウトツール、画像生成ツールから編集ツールへと渡すとき、解像度・カラープロファイル・レイヤー構造が崩れることがあります。ツールの仕様は更新で変わるため、書き出し設定は公式のドキュメントで都度確認するのが安全です。
Build — ロックしてから作り込む
Buildに入ったら、構図・配色・フォーマットといった主要な決定事項は変更しません。ここで「やっぱり別の方向も試したい」という気持ちが出たら、それはExperimentへの後戻りであり、Buildの作業ではありません。両者を混ぜると、作り込みの途中で土台から崩れます。
「あとで直す」を許さない基準
Buildで許容していいのは、決めた枠の中の微調整(余白の数値、書体のウェイトなど)だけです。枠そのものを変える判断が必要になったら、いったんBuildを止めてExperimentに戻る、というルールを明文化しておくと迷いません。
Present — 発表形式を先に決めておく
発表用の書き出し設定やレイアウトは、Presentの直前ではなくCreateの段階である程度決めておきます。インタラクティブなデジタル作品をつくる記事で扱うような公開の形(Web、SNS、印刷)によって必要な解像度や比率が変わるため、後から仕様を合わせ直すのは手戻りが大きい作業です。
ただし、この4段階をすべての制作に厳密に当てはめる必要はありません。個人のラフスケッチや練習用の一枚絵まで工程を分けると、かえって手が止まります。工程管理が効くのは、複数案の比較が必要な仕事や、後で他人に引き継ぐ制作物です。もっとも、小さな制作でも「これはCreateの気分でやる」と意識するだけで、判断の混線は減ります。
自分の作品や参考素材をツールにアップロードする際は、各ツールの利用規約とアップロード素材の権利範囲を確認してください。クライアント案件の非公開データは、許可なくAIツールに渡さないことが基本です。
こうした工程設計を体系的に身につけたい場合は、クリエイティブAI基礎講座など講座ページで扱っています。
参考文献
- Figma Help Center, "View a file's version history," https://help.figma.com/hc/en-us/articles/360038006754
- Adobe Help Center, "Creative Cloud Libraries overview," https://helpx.adobe.com/creative-cloud/help/creative-cloud-libraries.html
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